2010年1月21日木曜日

大太鼓

ジロウのウェブ仲間御一行様という札の出ているバスに乗り込む。まだジロウは来ていない。
かなり前から来ているらしい人も居て、毛布にくるまって狭い椅子で寝ている。
台風で新幹線に閉じこめられた人達の様な雰囲気。
「ジロウはどうしたのだ…相変わらず時間にはルーズだな…」なんて思う。

外から湿った草木のいい香りがしてきたので、窓側に行ってみると
バスに乗り込んだのだと思っていたのに旅館の一室だったコトが分かった。
というか窓の方に歩いている間に空間がそう、変化した。

大きく横長に開かれた特別設計の窓の外、トタン葺きの屋根の先には、
箱根の山奥の様な、なだらかな山が広がっていて
そこにうっすらと雨が降り出していた。

「いい風景だな。いいトコロへ来た。」と思っていると、
いきなりジロウの古い仲間のジャン君が、なにやら楽しげな素振りで
窓から外のトタン屋根へ歩き出し、端っこの方まで
行ったと思ったら、片手でぶら下がったりし出した。
「彼ってああいう危険なコトをする人だったのか…」
スゴイ怪力で屋根の端が捲れ上がったりする「メキメキ」という音もしている。

やおら満足したのか、体操代表の様な身のこなしで戻ってくると、
他の窓からみていたお客さん達から一斉に拍手があがり、
さらに彼らも屋根に出てきた。「大丈夫なのかな」と思っていたら
そっちはどこかの高校の修学旅行の一行らしく、引率の先生が
「頼むから建物だけは、壊さないでくれ」と懇願しながら
屋根に走り出してきたので、皆はしぶしぶ帰っていった。

雨も上がったので、私は自転車を借りて、ちょっと麓へ探検にいくコトにした。
建物を出て左の方へ続く気持ちのいい道を選んだ。
下りでもないのに、なぜかスピードも上がり、快適だったけど、
だんだん20~30センチくらいの、細長く切り立った岩が
ところどころに突き出ている箇所が多くなり危険になってきた。
引き返えそうと、ブレーキをかけるといきなりロックして、
地面に投げ出された。
肌を細かい砂地が擦る感触がした。
体の動きが止まったのでその姿勢のまま「どこか打っていないか」確認したけど、
どこも痛くはなかった。

随分進んだつもりだったけど、まだ最初の分かれ道から50メートルも来ていなかった。
分岐点に戻り、もう一本の麓へ行く道の方を降りていくコトにした。
でもしばらく行くと、さっきの衝撃もあってかチェーンがはずれたので降りた。

「どういう手順でやれば一番手が汚れないか」を調べている間に、その村の祭りの時間になり、
私が自転車を降りたトコロが出発点なのか、どんどん人が集まってきた。
みんな黄色いプラスチックで出来た釣り鐘状のモノをすっぽりアタマにカブっていた。
目のトコロだけは中世の鎧の様に細長く四角い切り込みがあった。
上半身も同じ黄色いトレーナーの様なモノを着て、赤いズボンをはいていた。
みんな少し太っていた。

「大した祭りでなないだろう…」と別に気にしないでチェーンを直している間に、おおきな山車がやってきたらしく、観客から声があがる。観てみると直径3メートルはある巨大な和太鼓の胴の部分がやけに薄いのが、山車に乗ってゆっくり遠ざかっていく。

「あの低音がなんともえなくスゴイ…」などと、近くにいる人達は興奮気味に話しているが、

私には終始なにも聞こえなかった。

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