2009年11月28日土曜日

光る樹の根本

友人のシンガーAseiさんの携帯サイトを私の連れが作ることになったので、
その打ち合わせをウチから歩いて30秒くらいの図書館でやるコトにして、
私は二人を待っていた。
お互いの顔を知っている私がまず二人を合わせて、あとはテキトーに…
という流れだ。

前庭、というか簡単な公園を兼ねたスペースを持つ
ガラス面積の多い建物で、規模が小さいせいかあまり人が来ない、
でも愛用している人はそこそこ多いいい図書館だ。
今回みたいに打ち合わせにも使える簡単な喫茶もある。

彼らの顔合わせも無事済み暇になった私は、
たまにガラス越しに彼らが談笑しているのをなんとなく確認しながら、
しばらく公園でブラブラするコトにした。
ウチはすぐ近くなので帰ってもいいんだけど、気持ちのいい日だったのだ。

しばらくすると、顔見知りの黒人がやってきた。
ホントは知らないフリをしたい知人だったんだけど、
障害物の無い人気のない公園、そういうワケにも行かず、簡単な挨拶をした。

案の定、一緒に来た仲間となんだか良くない相談をしている。
「人を殴るというのはそういうんじゃダメだ…、俺が教えてやる」
とかいいながら、ボクシングの真似事をやり始めた。
イマイチっぽい仲間を相手に軽くパンチを繰り出している。
さすが黒人で、繰り出すパンチのリーチが長い、異様に長い。
パンチは確かに有効なんだろうけど、見ていてちょっと異様(笑)
戦っている男、というより
変わった捕食動物が特別に進化した触手を伸ばしている
そんなカンジに見えた。

手応えのない仲間相手にしばらくそうした後で、案の定
「お前も俺のパンチを受けてみないか」と尋ねてきた。
そうなると断るワケにもいかず、薄いミットの様なモノを借りて、
彼のパンチを受けるコトになった。
人を憎んでいる様に見える彼の顔を正面に見据えながら、
それなりに「効いている」雰囲気を出しながら何発か付き合う。

最初の衝撃はそんなでもないのに、手のひらにジワっと押し込まれる感触が
なんとも気持ちわるかった。

しばらくして一応満足したのか、彼は仲間を連れて何処かに行ってしまった。
ヤレヤレ…

また元のベンチに戻ってボンヤリ座っていると、遠くから私を見ている女性がいる。
「ああ、そうだ、さっき占いをやってもらったよな…」
彼らよりも早く来ていた私は、
ここで「占い師の練習をしている」という彼女のために練習台になっていたのだ。

しばらく目を合わせた後、思い切った様に立ち上がり、
広場を真っ直ぐに横切って私の処にやってきて横に座った。
「もしよかったら…30分くらいでもいいから、私と散歩しません?」
と言う。
痩せてちょっと色の黒い、目鼻立ちのしっかりした綺麗な顔をしている。

いったん図書館に戻り、まだ打ち合わせ中だった連れの耳元で小声で
「さっき公園で会った女性とちょっと散歩してくる。遅くなっても心配しないで」
と言うと何かブツクサ言っていたけど、そのままにして出てきた。

歩き出すとすぐに、彼女は私の手を握ってきた。まあいい。
最初の角を曲がると、今度は手を回してきた。私もそれに応えてお互いに
腰に手を回して、ぴったり寄り添って歩いた。

しばらく歩くと、道路の反対側に大きな木が見えてきた。
地面から一メートルくらいの高さのトコロに、薄くもやがかかった様になっていて
キラキラ光っている。

猿丸神社の御神木と同じだな、と思った。