2012年1月28日土曜日

夕暮れの円盤

老先生が一人でやっている歯医者に行く。
何処が悪いというワケでもなく、なんとなく定期診断の様なつもりで。

帰りがけにアドヴァイスを書いた紙を受け付けでもらったけど、
「歯の健康に気をつけて、歯にいいモノを食べましょう」
みたいなコトしか書いてない。しかもちょっと勿体ぶった雰囲気。
「この医者が若い頃…昔はこれくらいのアドヴァイスでみんな有り難がったんなしょうがないな…」
ちょっとむっとして
「だから、何がいいのが具体的に言ってもらわないと現代の人は納得しませんよ」
彼に反省を促す意味でも、奥まで聞こえるような声で看護婦にくってかかる。

まあ老先生には何を言ってももう、効き目はないかもしれないが。
年をとってますます頑なに、でも表面的には柔和な柔軟な姿勢を装っているトコロが
ちょっと気にくわない。

診察室に戻ってみると、彼は診察室のベッドに横になっていた。
隣に看護婦も寝ている。
といっても、何かあやしげなコトをしようとしているワケではなく、
ただ横になって本格的に寝ようとしているだけみたいだった。

まあ…そもそも何か、納得がいく話が聞けるワケもないし…引き上げるコトにした。
そもそも、もう半分寝ているし…

自転車で帰る途中、夕暮れの、日が落ちてしばらく経った蒼い空に、音もなく円盤が出現した。
マットな真っ白い胴体が、蒼い空の色に染まって綺麗だった。
単純にとても美しくワクワクしたけど、ちょっとだけ不安でもあった。
円盤部分の周りに、三つタービン状のモノがついていた。
最初「円盤型の乗り物があるのだな。なるほど。アメリカが極秘に開発した戦闘機が解禁になったのかな」などと思っていたけど
飛び方が、どことなく地球のフツーの飛行物体と違っていた。

空気を噴射して動いているのだとすると、ちょっと不自然だった。
早すぎたり、不自然な姿勢でホバリングしたりしていた。
見ているうちに段々イヤな気がし出した。

異次元から現れた「何かの顔」が動いているようで、
別に目がついているわけじゃないのに、見られている様な気がしだした。

それにそもそも低いトコロに小さいモノが浮いているのか、
上空高いトコロに巨大なモノが浮いているのか、はっきりしない。

そのうち、何かを発射し出した。ゆっくり降りてくる、短い光るギザギザの線状のモノ。

建物に当たると「ジッ」と誘蛾灯に引き込まれた虫が焼けるような音を立てて、跳ね返っていった。
どうやら、建造物の堅さ、材質などを調査するための、光線らしかった。

デジカメで写真も撮りたかったけど、見られている様な気もするのでやめた。
カマキリの顔が獲物を追ってクルクル動く様に、滑らかにちょっと不吉にその円盤も動いた。

なんとなく…ちょっと隠れた方がよさそうだ。

金沢の旧市街地にいたので、まわりは細いクネクネした道の続く、古い街並みだ。
遠くの方から、街のざわめきらしきモノは聞こえてくるのだけど、私の周りに人は全くいなかった。

いよいよ、次の段階に移ったのか、今度は別のモノを発射し出した。
木が勢いよく燃えている時に出る、青灰色のモヤモヤした煙を円筒状にギュっと圧縮した…そんな様なモノ…。
音もなく、円盤からまっすぐ地上に、あっという間に到達する。

今度のは、ものすごい速さだ。
斜めに建物を貫通して、地面まで届いた。

燃えるワケでも、爆発するワケでもなかったけど、とりあえず関わりにならない方がよさそうだ。

私は空を見上げない様にしながら…
なるべく細いクネクネした道を選んで自転車を走らせた…
そのうちに円盤も見えなくなった。

2011年6月14日火曜日

経田屋さんの一輪挿し


ひがし茶屋街へ浅野川方面から入ってくると最初の角(観音院へ向かう、藩政期にはかなり珍しかったはずのまっすぐ・・・真っ直ぐの道)に面したトコロにある経田屋さん。(金沢市指定保存建物)竹を使った一輪挿しが三つ並んでいていつも気の利いた花が生けてある。経田屋さんご自身の手になるモノだと知ったのはつい最近のコト。

2011年3月17日木曜日

ジャパニーズ・ルンバ


名古屋の財界人の集まりに私は来ていた。
たまたま廻りには、様々な会社の社長夫人達が集まっていた。
一見和やかだったが、みな今日の出席者のうち、もっとも重要視されている会社の社長夫人に取り入ろうと&一目置かれようと、水面下で火花を散らしているようだった。

向こうの方に談笑する安倍首相の顔も見えたけど、
みなあまり注意を払っていなかった。
ご婦人方の勢力争いはなかなか大変なのだ。

しばらくして、分厚いフェルトで出来た釣鐘方のちゃんちゃんこの様なモノを羽織ったこの会の主催者の挨拶がはじまった。
細長いサツマイモのような輪郭の、
アタマの毛も眉毛もほとんどない顔だ。
そらぞらしい笑顔を終始浮かべながら
「安倍首相にもぜひお力をお貸しいただきたい」
というような通り一遍のあいさつを長々としていた。

まあ、こんなカンジだよね…
ご婦人方はその間もずっと、有力社長夫人の方を見ながら小声で喋り続けていた。

私はなぜか安倍首相とそこそこ親しくなり、
会が終わると一緒に移動するコトになった。
うしろの方にSPが二人付いてきたけど、基本的に二人だった。

これからトヨタが主催するパーティーがあるのだと言う。
薄暗く広い、舗装された場所をしばらく歩いて巨大なガレージの様な建物の前まで来た。

大きな跳ね上げ式の電動ドアが揚がると、そこにはとても頑丈そうな剥き出しのフレームが宙づりになって、ライトに照らされていた。

車位の大きさではあるけど、とくに乗り込む様にはなっていない。
だけど安倍首相は、少しのためらいもなくよじ登っていき、一番奥の低い位置に上手い具合に収まった。F1レーサーの様なポジションをとっている。
なんなんだろうこれ…人が乗るモノなのか…
私はわけもわからず、とりあえず安定のよさそうなフレームの間に仰向けに滑り込んだ。

間もなくそのフレームはするすると動き出した。
頑丈な直方体フレームは上下をがっちりレールに固定されていて
どんどん加速して行く。
同時に「007」のテーマが遠くで控えめに鳴りだした。
サプライズだけど同時に「安心してください。ちゃんとコントロールされています」
というメッセージを控えめに伝えているのだ。
日本人っぽい演出。音質も上質だった。

かなり速度も上がってきて、たまに蛇行したりして、なかなかのGを感じるのだが、さすがトヨタだ。どんな急移動にも破綻なく滑らかにフレームは動いた。
「スペースマウンテンの宇宙飛行士訓練様バージョン」といったら分かりやすいだろうか。
楽しいのと、強すぎるGの狭間のギリギリの乗り物(移動)だ。
安倍さんは終始攻め込むF1レーサーの様な面持ちだが、内心は楽しんでいるのだろう。
私は仰向けでヘンな姿勢で乗り込んだコトを後悔していた。全然前が見えないからね。

ついたところは、巨大なホール。
世界全体が秘密組織を構築していて、安倍首相はそこの秘密工作員となる、今日はその就任式だったのだ。
で、私もなぜかその補佐役として選ばれたらしい。
どうりで安倍さんがやけに親しくしてきたわけだ。
会場には世界中の人々が何千人も集まっていた。

何度も練習してきたらしく安倍さんは、体を固定してたベルトをはずしスッと立ち上がり、大統領就任の宣誓を行うようなポーズを取って私がちゃんと起きあがるのを待っている。

私は仰向けで散々振り回されて移動してきたので靴が片方脱げてしまってその靴がなかなか上手く履けないでいた。
背後に千人以上の観客がいて「今か今かと」就任のセレモニーが始まるのを待っている。

あせればあせるほど上手く靴がはけない。
いつのまには私は「ニューヨーク刑事モノ」によく
登場する「ちょっと間抜けな明るい黒人キャラ」に変わっていた。
「黒人キャラとしてなにか気の利いたコトを言わねば…」
なぜかなかなか上手く結べない靴ひもに苦戦しながら思わず

「チョトマテ〜クダァサイ」と言ってしまった。

なんだそれ…

でも同時に一割くらいの人達から苦笑がさざ波のように起こった。
「お、ちょっとウケたのか!?」でもはるかに恥ずかしかったけど。

二人並んで立ち上がって簡単で退屈な宣誓を無事すませ、
バッチなどの諸々をもらうために横一列に並んでいる職員の前を順番に移動する。

一番端っこにいた、特に役割のない職員が私にちょっと愛想良く近寄ってきて
「さっきの発言はよかった。我々の国の言葉ではあれは○○○○○○の意味だ。面白かったよ」
と言って私の言った言葉を復唱するのだが
それは「チョトマテ〜クダァサイ」とは全然違う、簡単には聞き取れない複雑な音だった。
彼の「もう一回オレに言ってみてくれない、アレ」
みたいな顔に答えるべく、なるべく彼が今喋った音に近いフレーズを言ってみたのだけど
今度は全然うけなかった。不信な顔をしているままだった。

2011年3月13日日曜日

東山逍遥 雪の夜

昼間は観光客で賑わう東山界隈はめっきり人出の少なくなった夜にこそ、茶屋街本来の落ち着いたしっとりした姿を現す。
例によって降っては溶けの金澤の雪、三月始めのこの日も新雪ように薄く真っ白く積もった雪明りの中、冬ならではの夜の光景。
こんな時に何処を目指すでもなく・・・ふらりふらり茶屋街を彷徨い歩くのは楽しい。
正面に明りを灯す建物は、芸妓さん出身のソムリエ女将がカウンターに立つ照葉、いかにも茶屋街らしい洒落たワインバー。微かに華やかな声が漏れ聞こえてきそうだ。
2011年3月3日午前零時26分撮影。

2011年2月17日木曜日

浅野川小景 雪舞風姿


2010年初頭の金澤、浅野川に雪が舞う美しい風景の映像小品。
陽が射­す中を雪が降る金澤らしい光景をいいカンジに表現出来たと思う。
音楽はレオナール・フジタの一生を解説した映像のために作曲した9分強の曲を再アレンジ、淡­々と美しく、激しさを奥深くに秘め、そして多くの愛を内包した曲にしたつもり。
金澤の雪風姿によくマッチして時々「映画のワンシーン」の様でしょう(^_^;)・・・って­思ったんだけどアップしてみると「雪舞」はyoutubeエンコードが苦手とする素材­らしく、しっとり感が4割くらいは減っている・・・ちょい残念・・・で画質が良いと評判のvimeoにアップしてみたら、かなり綺麗。ちょっといろいろ再アップ&リンクを変更した方がいいかもなぁ。
静止画の段階で既に綺麗(^_^;)

2011年1月27日木曜日

六本木海岸

ハマコー先生と六本木のホテルで待ち合わせ。
殆ど知られていないが六本木は実は入江になっていて、そのホテルは海に食い込む様に建っていた。
全面ガラス張りで海の中まで見通せる‘イカにも’なフロント
遭難している船が見える。大きい豪華客船、少人数用のクルーザーなども。
難所でもあるのだ。さすが六本木だ。

二人で歩きながら「あの高台にみえる高島屋にセレブ達はついつい行ってしまうらしい」
とハマコー先生、見上げると上品で豪華な作りのマンション。
「あれはマンションですよ。叶姉妹なんかが住むんじゃ?」
先生が「もっと向こうだ」と指を差す。
いつのまにか東京はとても起伏に富む地形で、その高台から一つ谷を超えたさらに向こうの高台に
沢山のデパートが建っていて、その中に一際大きな高島屋があった。

ハマコー先生について、‘エスカレータービル’へ入る
これから先の渓谷に降りていくための高速エスカレーターが何本もある
両側に手すりがついていない超高速にのると、まるでスキージャンプのようだ。
終点に近づくと見事に減速して、つんのめるコトなく降りれた。

降りたトコロはそのまま、動く歩道で「マクドナルド」に繋がっていた。
これも東京らしい。
手前で小さいワゴンに載った無料のサービスセットをもらい、そのままマラソンの補給ポイント
のように、マックの店員が両側に並ぶ前を通る。よくみるとポテトなどが微妙に高い。
ハマコー先生は全てパスして代わりに手前のゴミ箱に飲みかけのコーラーを投げ入れた。
・・・つもりがハズレて商品が並んでいるパレットを直撃していた・・・店員達は文句が言えない様子。

ついたマクドナルドでなにやらこちらを差してお客、店員達が口々にいう。
私もちょっとだけ有名人のようだ。
どうやら新しいCM撮影の顔合わせで、俳優やら、何やら・・呼ばれているらしい。

そのまま、人が集まってきてスポンサーの挨拶がはじまった
退屈なので、外に出た。
オープンカフェスペース

空を見上げるとツルツルの巨大なブロックが、どんどんカタチを変化させながら浮いている。
低い雲くらいの高さで、大きさも雲くらい。
周りにいる人は誰も見上げていない。
妻に電話をかけて、今空が凄い・・・「よく夢に出てくる光景とソックリだ」と大声で伝えると
周りの人々も気付いて騒ぎ出した。

何かの自然現象なのか、それとも侵略者の仕業か・・・しばらく呆然とウットリ眺めていたが
そのうち、数字や文字らしきモノも現れだした。
随分お金のかかった新手の広告らしい、それにしてもすごいテクノロジー。
だけど、かなり残念(^_^;)

2011年1月17日月曜日

21世紀美術館 冬の祭壇

金澤の光を映す21世紀美術館、雪が積もったこの日は乱反射する光が空気に満ちて近寄り難い感すらあった。
神々しい・・・。神殿の様にも見える・・・。
この時の「金澤の光」が素晴らしい事態になっていた・・・というコトでもあるんだな。 2011/01/03 14:56

2011年1月16日日曜日

金澤冬鏡

金澤の冬の空は特に、空の輝きがなんともいえない美しさ。
まるで空全体に薄くプラチナの粉をまぶしたように淡く輝く。雲も雲間の空も
映った空を眺めによく行く兼六園、霞ヶ池から。無風の穏やかな午後。 2011/01/02 16:06

2010年11月4日木曜日

21世紀‘現在’美術館


現代美術館であると同時に「刻々と移り変わる金澤の光」を見事に映し込む大きなモニュメント。
瞬間瞬間の空を反映し溶け込み昇華して'金澤の現在'を絶えず出現させ続ける、いわば「現在美術館」。
曲はレオナール・フジタ大回顧展のために作ったピアノ即興。シャペル・フジタとして知られる晩年の全てをかけて作った聖堂のテーマ。
この建物の存在感にもよく合っていると思う。

2010年10月5日火曜日

博多にて


愛弟子の結婚式で博多に行ってきた。かなり好きな街で、その印象は変わらないんだけど
川音が全然しない(水の流れがホトンドないから)橋による空間、次元の変化がほぼ、無い(金澤と大きく違う点)料理は美味しいけど味が濃い(多分、水道水がかなり不味いから?)地形による街のリズム変化がほぼ、無い。(太宰府までクルマで行ってみて・・・その緩慢な変化を確認)など、遊びで徒歩、地下鉄 クルマと手段を変えゆっくり廻ってみると新たな発見がいろいろあった。
それにしてもやはり博多っ子は圧倒的に美人が多い。スゴイ。

2010年8月25日水曜日

水のおもて


兼六園は年中早朝無料開園しているので夏の夜明けに佇むには最適。
稜線が白んでくる景色にあわせ日暮、アブラゼミが段々鳴き出して・・
光も香りも音も楽しい。
でもなんでだろう、ついつい魅入ってしまうのは、池のおもて。
水は相当不思議で魅力的なモノなのだ。

2010年2月28日日曜日

クラムボン

私は広いリビングの一番隅でMacに向かって仕事をしている。
クラムボンのおかっぱの女の子が遊びにきている。(全然知り合いじゃないけど)

仕事を一段落させ「せっかくだからこの様子をミクシィに載せよう」
と思い、デジカメを手に取った。

ところが…カメラを向けられた彼女がニットキャップを取ると、
突然全然違う顔になった。

パッチワーク状に、顔の表面に色が塗ってある。
熱狂的なサッカーファンの様。
目の周りもピエロの様だ。
「全然違う顔だな~、なんだか顔の凹凸も増してきたぞ…へんなの…」

彼女は「どう、新しいメークなんだけど…」みたいなコトを言っている。
ちょっと自慢げ。どうしよう…
顔も性格もさっきまでとはまるで別人だ。

ところで、カメラがシャッターを押したタイミングで全然撮れない。
最近は、またそうなったのだ。

デジカメは素人には思いもつかない「ある種のリアル」を求めて競争&発展し続けた結果、
画像の処理がどんどん、どんどん複雑になり、演算装置のスピードアップが追いつかないのだ。
でも「思いがけないタイミングの写真が撮れてかえってイイモノだな」
とも思った。

そのうち彼女の仕事関係の女の子達も何人かやってきて、ちょっとしたパーティーの時間になった。

私がパスタをつくって振る舞うのだ。
「ちょっと手前にいる子は可愛いな…それに、横座りしている足がセクシーだな…」
なんて思いながらお皿を持っていったその時

部屋の南側に大きく天井まで開いた窓、から見える空、の真ん中高くで
すごくまぶしい爆発が起こった。

やわらかい、鈍い「ドフッ」という音がして、一瞬小さい太陽が現れた出現した様だった。
初期のスターウォーズの様な、綺麗な不純物の無さそうな爆発だった。
煙みたいなモノも全然立ち上らず、すぐに静かな夜空に戻った。

皆はのんきなもので「花火かしら…」なんてイイながらぼんやりまだ空を眺めている。
次を期待しているのだろう。

「細かい破片がこれから届くかもしれないし、殺傷目的かもしれない、
それに何か、目に見えない、例えば中性子とか…あるいは…」
そう、ゆる~く思った私は、とりあえず壁の後ろに隠れたりしながら(意味ないけどね…)
「こういう時はまずテレビをつけてみて」と連れに半ば命令口調で言った。
(だんだん、不吉な、よくないコトが起こる前兆…の様な気がし出していた)

連れは複雑なリモコンが上手く操作出来ないでいる。案の定だ。

「それじゃ、ダメだよ。画面切り替えの入力が違うでしょ。ほらかして…」

なぜかどのチャンネルもアニメ「沈黙の戦艦大和」を放映している。
切り替えても切り替えても、ちょっとダビング状態の悪いカンジの大和をやっていた。
ワイド画面だったり、株価情報が隅にあったり、4対3の画面の周りが黒くクロップされてたり、マチマチだった。

「日本が何かの記念日なのか?そうするとますます、さっきの爆発はあやしい?それとも?」
「まずリセットだ。ああ、このボタンと電源を同時押しだな」

やってみるものの、やっぱりさっきと同じアニメを延々流している


これはどうもネットで調べた方がよさそうだな、と思った。

2010年1月27日水曜日

クローン


くたびれた畳敷きでちょっと薄暗くて天井の低い、急ごしらえの集会場の様な場所で
地味な宴会が開かれていた。
横長の机を何台もくっつけて布団を掛けて炬燵仕立てにしてある。
私の隣には、ハマタケさんがぼんやり座っていた。

しばらくすると気がふれた女が乱入してきた。

半狂乱の形相で「タケシはどこ、隠れてもダメよ」と言いながら、
コタツ布団をすごい勢いであちこちめくる。
「タケシ」がどこにも居ないとわかると「もうタケシとあの女から永遠に幸せを奪ってやる、そのためにこうしたのさ」
と言いながら紙袋から何かを…とりだした。

「あ、彼女は殺したタケシの赤ん坊の首を持ってきたんだ、その首を今から高く掲げるつもりだ…」
私は直感的にそう思い、ハマタケさんの目を覆った。
「だめだ、見ちゃいけない」
自分も見たくないので目をつむった。掌に、ハマタケさんの額から出ている汗の感触が伝わってきた。

突然彼女がゆったり落ち着いた声で「はあ、こういう見せ方もあるのね」とか言い出したから思わず手を離し、
私も目を開けてみると、そこはギャラリー空間にになっていて
さきほどの惨事はすべて象徴化されたオブジェ作品になっていた。

天井近くに吊された、ゆりかごの様なモノに、張りぼての丸いモノが入っていて、ころころ動いている。
並んだ人達が順番に「ちょっと有り難いモノ」であるかの様に見上げていた。

向こうの方にギャラリーレクチャーをやっている学芸員と客の一団が見えたので、「それとなくついて回ろう」
と思ったんだけど、さりげなく近づこうとしているうちに彼らはさっさとエレベーターで降りていってしまった。

その脇に階段室があった。ロの字型にず~っと下の方まで続いている。
手すりが実用新案らしく、スライドして動くプラスチックの取っ手をタイミング良く順番に操作することによって、
連続して手すりに腰掛けたまま下まで降りていける仕組みだった。
ガウンを着た英国人の老人が二人、慣れた様子でサーっと降りていった。
この美術館(か何か)に泊まり込みで研究している学者達だろうか…
自分も試してみたのだが上手く行かず、1階分降りたところでとりあえず断念した。
その階はさっきとは違い、なんだか閑散としていた。
大きな吹き抜けのある場所、吹き抜けの周りには、透明アクリルの大きな平たい箱が並んでいる。
冷たい白い光に浮かんでいた。

目を凝らすと手がうごめいているのがみえた。一つ一つの箱に人間?が入っているのか。
あれ、なんだか…出てきそうだぞ…

この階はどうも不味い予感がしてきたので、立ち去ろうと思うのだけど階段がみあたらない。
仕方がないので、目についたドアを開けてみた。
開けてみると薄暗い照明の廊下。
その先右側にちょっと光がみえたので行ってみると、広~い空間が広がっていてそこには何百もの先程見た人間(なのか?)達が全裸で蠢いていた。
薄ら笑いを浮かべてユラユラ動きながら、ちょっとずつ近づいてくる。
目つきからして、ちょっと脳に欠陥があるのかもしれない。
ほとんど同じ顔なのでクローンなのかもしれない。

戻ろうと思ったらさっきのドア、こちら側には取っ手がなかった。

「ああ、夢なら覚めないかな…でも夢じゃないよな」そんなコトを思った瞬間、廊下の片側の壁がどんでん返しさながらに、外向きにバ~っと倒れた。
芝生の緑が目に飛び込んできた。外は金網に囲まれた屋外運動場だった。
クローン達は定期的に運動しなくてはならず、そのために自動的に開いたらしい。

金網を登って脱出するコトにした。
そんなに高さはないんだけど、クローン達はちょっとアタマが弱いらしく「よじ登る」というコトが出来ないらしい。
まっすぐ金網に前進してきて、ぶつかって、戻って行った。
その間もなんとなく薄ら笑いを浮かべている。

裸のクローン達を後に「脱出してきた」コトをまわりに悟られないように(なぜ?ハハハ)筑波学園都市の郊外の様な雰囲気の道をとにかく歩いた。

先に高校があるみたいだ。
仲間が(いつの間にか4人組になっていた)
通りがかった「身体は大きいが気が弱そうな二人組」を脅して、
その高校の制服を持ってこさせるコトにした。
「おい、おまえの高校で人気がある四つの運動部のユニフォームを一つずつ、今すぐ持ってこい」
言いながらも、ビシ、ビシと殴っている音が聞こえてきた。
「そんなに殴らなくても…でもやっぱりそれくらい徹底しないと言うことを聞かないのかな。なるほど、脅し慣れているヤツはやり方が徹底しているモノなのだな。」
高校に潜入して、あわよくば人気者になろう…という不思議な作戦らしかった。

しばらくして届いた服を道の脇にあった小屋で着替え始めた。
「でも、四人が四人とも違うユニフォームで行くとかえってヘンじゃないのかな…」

とぼんやり考えながら、紫が基調のバドミントン部の服に着替えていた。

2010年1月22日金曜日

爪楊枝

手のひらからトゲがでていた。
引っ張ってみると爪楊枝の先、3センチくらいありそうな、もの。
よくみると、もう一本、探ってみるとまだある。
血は出ない。しばらくしてみてみると、また一本、二本。
結局片手から、20~30本くらい出てきた。
「これはちょっと不思議な症状だぞ」と集めた爪楊枝の先を観ながら思う。

手のひらをふとみると、
‘細切れのレバーが沢山入っている発泡スチロールのトレー'
が皮膚を透けてみえている…そんなカンジに見えた(なんだそれ?)
ちょっと古くなって、酸化して変色している部分もある。
よ~く観てみると全部小さい赤黒い歯車状の何かだ。ちょっと気持ち悪い。
掌をこすり合わせてみると、見えなくなった。
ちょっと痛い。そりゃ、無理もない。
あんなに沢山の楊枝が入っていたのだ。
マキロンを塗ろうか、オロナインか…
最初にマキロンを塗って、そのあとオロナインを濡ればいいのか。
でもこれから料理をするから、マキロンだけか…

そんなコトを考えた。しばらく時間が経った。その間何をしていたのか…
分からない。

犀川の下菊橋の桁につくってある離れに移動する。
我が家が川遊びをする時に利用する、離れ&屋敷の出口だ。

ウチはちょっとした名家なのだ。

見下ろすと遊覧船が派手なアナウンスと共にジグザグに移動している。
ディズニーが新しく始めたアトラクションだ。
危機一髪を演出しながら、派手にUターンを繰り返している。
乗客は気づかないらしいけど上から見ると、ホントに川岸ギリギリを通っている。
今にぶつかるよね。
乗客には見えないトコロで、二人の水兵が焦ってバタバタ動いているのが見えた。
ホントに危機一髪だ。
橋桁には、アザラシが何頭かいる。これもディズニーが餌付けをしているらしい。
近寄っても全然逃げない。

下に降りると増水していて、いつもは歩いて川岸まで渡れるのにちょっと無理。
都合良く小さい筏が流れてきたので、それを足で操って慣れた感じで川岸に渡る。
周りに沢山の観光客がいる中、そういう場所に自宅の離れがあるコト、
筏を慣れた様子で操っているコトなどが優越感をくすぐる。
観ている人達もちょっと羨ましそうだ。
アザラシたちも近寄ってくる。

そのまま川沿いに建つ、母校の小学校の裏の道へ向かう。秋に咲く桜が何本も満開の綺麗な夕暮れだった。
桜のいい香りを一杯に吸い込みながら、良い気分で歩いた。



2010年1月21日木曜日

大太鼓

ジロウのウェブ仲間御一行様という札の出ているバスに乗り込む。まだジロウは来ていない。
かなり前から来ているらしい人も居て、毛布にくるまって狭い椅子で寝ている。
台風で新幹線に閉じこめられた人達の様な雰囲気。
「ジロウはどうしたのだ…相変わらず時間にはルーズだな…」なんて思う。

外から湿った草木のいい香りがしてきたので、窓側に行ってみると
バスに乗り込んだのだと思っていたのに旅館の一室だったコトが分かった。
というか窓の方に歩いている間に空間がそう、変化した。

大きく横長に開かれた特別設計の窓の外、トタン葺きの屋根の先には、
箱根の山奥の様な、なだらかな山が広がっていて
そこにうっすらと雨が降り出していた。

「いい風景だな。いいトコロへ来た。」と思っていると、
いきなりジロウの古い仲間のジャン君が、なにやら楽しげな素振りで
窓から外のトタン屋根へ歩き出し、端っこの方まで
行ったと思ったら、片手でぶら下がったりし出した。
「彼ってああいう危険なコトをする人だったのか…」
スゴイ怪力で屋根の端が捲れ上がったりする「メキメキ」という音もしている。

やおら満足したのか、体操代表の様な身のこなしで戻ってくると、
他の窓からみていたお客さん達から一斉に拍手があがり、
さらに彼らも屋根に出てきた。「大丈夫なのかな」と思っていたら
そっちはどこかの高校の修学旅行の一行らしく、引率の先生が
「頼むから建物だけは、壊さないでくれ」と懇願しながら
屋根に走り出してきたので、皆はしぶしぶ帰っていった。

雨も上がったので、私は自転車を借りて、ちょっと麓へ探検にいくコトにした。
建物を出て左の方へ続く気持ちのいい道を選んだ。
下りでもないのに、なぜかスピードも上がり、快適だったけど、
だんだん20~30センチくらいの、細長く切り立った岩が
ところどころに突き出ている箇所が多くなり危険になってきた。
引き返えそうと、ブレーキをかけるといきなりロックして、
地面に投げ出された。
肌を細かい砂地が擦る感触がした。
体の動きが止まったのでその姿勢のまま「どこか打っていないか」確認したけど、
どこも痛くはなかった。

随分進んだつもりだったけど、まだ最初の分かれ道から50メートルも来ていなかった。
分岐点に戻り、もう一本の麓へ行く道の方を降りていくコトにした。
でもしばらく行くと、さっきの衝撃もあってかチェーンがはずれたので降りた。

「どういう手順でやれば一番手が汚れないか」を調べている間に、その村の祭りの時間になり、
私が自転車を降りたトコロが出発点なのか、どんどん人が集まってきた。
みんな黄色いプラスチックで出来た釣り鐘状のモノをすっぽりアタマにカブっていた。
目のトコロだけは中世の鎧の様に細長く四角い切り込みがあった。
上半身も同じ黄色いトレーナーの様なモノを着て、赤いズボンをはいていた。
みんな少し太っていた。

「大した祭りでなないだろう…」と別に気にしないでチェーンを直している間に、おおきな山車がやってきたらしく、観客から声があがる。観てみると直径3メートルはある巨大な和太鼓の胴の部分がやけに薄いのが、山車に乗ってゆっくり遠ざかっていく。

「あの低音がなんともえなくスゴイ…」などと、近くにいる人達は興奮気味に話しているが、

私には終始なにも聞こえなかった。

2010年1月20日水曜日

タイヤ乗り

タイヤに乗って移動する、そんな健康法がブームだ。
ちょっとそのヘンの雑誌を開いてみても有名ドライバー、自動車評論家などが、その効能を
いろいろ書き立てている。

と言ってもタイヤを転がして、進むワケではない。
横倒しにしたタイヤの片方に乗って、もう一方についているヒモを掴んで両足を突っ張るようにして立つ。
するとちょっとの間をおいて、するすると滑り出すように動き出す。
ちょっとアタマの足りない子供が遊んでいるフウだけど、それに乗って移動するのがブームだ。

それなりにゆっくりになるけど登り坂でも進む。どういう仕組みかは分からないけど。
誰も何も疑問を持たない。とにかく横倒しにしたタイヤに乗るとそれは進むのだ。
そういう世の中。

それに乗って青山にある、古い大きな西洋館を改築して作ってある現代美術館に行った。
カビ、キノコの展示をやっている。最初ビミョーな気もしたがなかなか面白い。
ちょっと凝った昔の行燈の透かしの様な模様の入った、大きな傘をつけたキノコ。
こういう生物の常で、細かくバリエーション違いがあって、
それが蛍光灯に照らされガラスケースに入って淡々と並んでいた。
やる気のない、博物館っぽい展示がかえって効果を上げている様だった。

ちょうど模様換えらしく、自慢のブックセンターはホトンド空。
「そういう時なのを知らずに来てしまった…」
コトを周りになるべく悟られないように(笑)あちこちを興味深そうに歩き回る。

行燈型キノコがだんだん成長していく様子が
‘パラパラアニメの様に表示される大きなポスター'
が入り口付近に、グッズとして沢山展示してある。
厚手のコーティング紙っぽく見えるのだけど、注視すると…
どうなっているんだろう…相当の多層構造レンチキュラーのごとく…画が変わっていく。
黎明期を少し抜け出した頃のCGを早送りで見ているみたいだった。
(キノコ自体、そういうシンプルな、ある種バクテリアの様な構造なのだ)
買おうかどうしようか…ちょっとだけ迷ったけど
「こういうモノはその場では良く見えてもウチに持って帰ってみると意外と持て余すからな…」
と考え直す。

高円寺に向かって、またタイヤに乗って進む。
途中雨が降ってきたので、環7沿いのオートバックスでちょっと雨宿り。
ちょっと年配の店員は、まだブームを知らないらしく
入って来た私を思いっきりヘンな顔で見ている。
若い店員は、知っているけどまだ乗ったことがないらしく
「どうですか、乗り心地は」なんて話しかけてくる。

雨も上がったので、また出かける。
トラックもビュンビュン走る、環七をまた進む。低いトコロを走っているせいか
空が広くて、あんまり混雑は気にならない。
(実際は逆だと思うけど…まあ夢の中では納得している)

中央線のガードが見えてきた。あの下を右折しようと思う。





2009年12月7日月曜日

丸の内で空を見上げて


東京はかなりの範囲でその時々の思い付きの計画でビルが立ち並んでいるので落ち着かない街並みが多いけど
丸の内あたりは三菱の長年の仕切りが入っているのでちょっとだけ美しい箇所もある。よね。
雲のスクリーンに投射するプロジェクター・・と見立てるとちょっと悪くない。かも。

丸の内線側から新丸ビルに入る自動ドアのあたり、すっごく突き刺さる音が天井から鳴っていて(ネズミ避け?超音波のつもりなのだろうか・・?)
でも次々に平気な顔をして人々が往来するのはちょっと不気味。

2009年11月28日土曜日

光る樹の根本

友人のシンガーAseiさんの携帯サイトを私の連れが作ることになったので、
その打ち合わせをウチから歩いて30秒くらいの図書館でやるコトにして、
私は二人を待っていた。
お互いの顔を知っている私がまず二人を合わせて、あとはテキトーに…
という流れだ。

前庭、というか簡単な公園を兼ねたスペースを持つ
ガラス面積の多い建物で、規模が小さいせいかあまり人が来ない、
でも愛用している人はそこそこ多いいい図書館だ。
今回みたいに打ち合わせにも使える簡単な喫茶もある。

彼らの顔合わせも無事済み暇になった私は、
たまにガラス越しに彼らが談笑しているのをなんとなく確認しながら、
しばらく公園でブラブラするコトにした。
ウチはすぐ近くなので帰ってもいいんだけど、気持ちのいい日だったのだ。

しばらくすると、顔見知りの黒人がやってきた。
ホントは知らないフリをしたい知人だったんだけど、
障害物の無い人気のない公園、そういうワケにも行かず、簡単な挨拶をした。

案の定、一緒に来た仲間となんだか良くない相談をしている。
「人を殴るというのはそういうんじゃダメだ…、俺が教えてやる」
とかいいながら、ボクシングの真似事をやり始めた。
イマイチっぽい仲間を相手に軽くパンチを繰り出している。
さすが黒人で、繰り出すパンチのリーチが長い、異様に長い。
パンチは確かに有効なんだろうけど、見ていてちょっと異様(笑)
戦っている男、というより
変わった捕食動物が特別に進化した触手を伸ばしている
そんなカンジに見えた。

手応えのない仲間相手にしばらくそうした後で、案の定
「お前も俺のパンチを受けてみないか」と尋ねてきた。
そうなると断るワケにもいかず、薄いミットの様なモノを借りて、
彼のパンチを受けるコトになった。
人を憎んでいる様に見える彼の顔を正面に見据えながら、
それなりに「効いている」雰囲気を出しながら何発か付き合う。

最初の衝撃はそんなでもないのに、手のひらにジワっと押し込まれる感触が
なんとも気持ちわるかった。

しばらくして一応満足したのか、彼は仲間を連れて何処かに行ってしまった。
ヤレヤレ…

また元のベンチに戻ってボンヤリ座っていると、遠くから私を見ている女性がいる。
「ああ、そうだ、さっき占いをやってもらったよな…」
彼らよりも早く来ていた私は、
ここで「占い師の練習をしている」という彼女のために練習台になっていたのだ。

しばらく目を合わせた後、思い切った様に立ち上がり、
広場を真っ直ぐに横切って私の処にやってきて横に座った。
「もしよかったら…30分くらいでもいいから、私と散歩しません?」
と言う。
痩せてちょっと色の黒い、目鼻立ちのしっかりした綺麗な顔をしている。

いったん図書館に戻り、まだ打ち合わせ中だった連れの耳元で小声で
「さっき公園で会った女性とちょっと散歩してくる。遅くなっても心配しないで」
と言うと何かブツクサ言っていたけど、そのままにして出てきた。

歩き出すとすぐに、彼女は私の手を握ってきた。まあいい。
最初の角を曲がると、今度は手を回してきた。私もそれに応えてお互いに
腰に手を回して、ぴったり寄り添って歩いた。

しばらく歩くと、道路の反対側に大きな木が見えてきた。
地面から一メートルくらいの高さのトコロに、薄くもやがかかった様になっていて
キラキラ光っている。

猿丸神社の御神木と同じだな、と思った。




2009年8月16日日曜日

ひがし茶屋街の猫奴さん


ひがし茶屋街には首輪をしていない、
カテゴリー的には野良猫なのだろうけど
皆に認知され育まれている猫が何匹かいる。
それぞれ大体のテリトリーを持ち、
風景に溶け込みながら暮らしている。

この姐さんは・・・
ひがしの広見前、螢屋さん周辺がお気に入りの様子。
自由気ままに、優雅に歩き回り佇み、寝転がる。

ちなみにこの30秒くらい前は柳に集う若ツバメ達
(ひがしでは軒先にツバメを迎える家が多い)を狙って
幹を2階の高さくらいまで、あっという間に登り、降りて来た。

もう、そんなコトは・・・・まるで無かったかの様。

2009年7月8日水曜日

よろずのことは、月観るにこそ


東京の自宅マンションの窓からも、年に何回か素敵な月が眺められるコトもある。
なんていうだろう、モチロン満月は一年に12回やってくるけど趣がね・・・
低い薄い雲が早く動いているコトからも分かるけど、風も心地良い夜。

兼好法師の「この出だしは何だっけ・・・」と読み返してみると(二十一段)
「月、花はいうまでもないが、風は、特に、人間に興趣を感じる心を催させるもののようだ。・・・」(安良岡康作氏訳)とも書いてある。
何度も読んだつもりだったんだけど「こんなコト言っていたっけ?おお!」ってちょっとウレシイ気分。

あなたも風派でしたか。

2009年6月8日月曜日

劇場での日々


金澤にいる時は毎日目にする&夕暮れ時にはビール片手に必ず舞台に立つ(笑)梅の橋演舞場。
今にも何か舞台が始まりそう・・・でもあり。
既に上演中・・・とも言えそう・・・でもあり。
金澤旧市街という複合劇場施設の中の浅野川小ホール。
犀川大ホールに比べキャパは少ないけど造りは濃厚。

2009年6月6日土曜日

PMC


百万石まつりの当日、
エフエム石川の西坂さんに案内して頂き金沢工業大学のPMC
巨大なレコードアーカイブ。
日々インデックス化が進んでいて20万枚近くある蔵盤は一目瞭然。
で、自由に試聴が出来る。(10数席用意されたボディソニックシートで・・・)
DJ界を中心に世界的にそこそこ知れ渡っているのも納得。
同行のTさんは自分がプロデュースした数々の名盤を見つけてご満悦。

桃源郷
そしてとても、とても大切な未来へ向けての財産。
僕たちは普段ずいぶん簡略化されたCDやAAC音源を聴いているからね。

2009年5月9日土曜日

大手掘


子供の頃から夢に何度も何度も出てくる大手掘。 左手の石垣から先は昔はホントに鬱蒼とした森、 夜になると巨大な黒い塊だった。手前の、トップリ水を湛えたお堀は変わらず。
適度に整備され、ゆったりと過ごせる場になった。 一年を通して様々な美しさを見せてくれるお堀。

2009年5月1日金曜日

夕暮れタイムトンネル

白い壁と透明なガラスで出来たこの建物は金澤の刻々と移りゆく光を映してそれ自体が鑑賞対象。 タレルさんの部屋から眺める切り取られた空もいいけど(実は・・・空から降ってくる音もかなりイイ)こういう時間の(マジックアワーの)外観は思わず息を呑む。
すっかり青いとばりが降りてきた空と明るく輝く室内の対比がちょっと不思議。あちらこちらに異次元の狭間がある金澤、ここにも次元のズレがありそうだ。

2009年4月14日火曜日

Dotバト


浅野川 大橋〜梅の橋の間の河原を覆い尽くす花片。
散ってもまだまだ楽しめるのが金澤のサクラ

2009年4月13日月曜日

W次元坂


文学作品にもたびたび取り上げられ、そのちょっと洒落たネーミングとも相まって、金澤でも有名な坂。
古い坂の骨格や石組み、趣は最大限に残しつつ、絶妙なさじ加減でリニューアルされた現代版 W坂。
(金沢市はこういうのとても上手。いつも感心)
ここは藩政期に奥方へのサービスとして城から桜霞を眺めるために桜を植えたあたり(優雅な話。昔は桜畠と言った)渋い石垣と桜のマッチングはいかにも金澤。
石段を踏むたび、角を曲がるたび、どんどん変化する眺めを味わっているうちに、いつのまにか降りて(上って)しまう。
寺町台地と犀川河畔というキッチリ隣接している異界を結ぶ坂。

2009年3月13日金曜日

ナイトメディテーションバスコレクション、再び


去年の11月に限定発売され、すぐに完売してしまった
アユーラ ナイトメディテーションバスコレクションが
今度は桜色のプレーヤーになって限定発売中。

思い返せば…いつだったっけ…20世紀の終わり頃か…
「アユーラブランドを浸透させるイベント会場に流す音楽を…」
というオーダーで作った数曲が好評で
(自分自身とても気に入った仕事)
その後
「聴いてリラックスして、綺麗になる」という商品企画が立ち上がり
アユーラCD「快」が発売され・・・

そして去年の夏
このアルバムを組み込んだ素敵な限定商品の話を頂き…
そしてまたニューバージョンの発売…

アユーラを通して
「こういう機会がなければ接しなかったであろう人達」
の耳にも私の音楽が届いているんだろうな〜と想像すると
とてもウレシイ♪

ブログの表題にもあるように
「金澤を愛する作曲家」の
金澤での美しい記憶を元に作られた曲が沢山収録されています。
地元の人達にも沢山愛聴してもらいたいモノ

2009年3月3日火曜日

手拍子委員会


天井がパノラマルーフになっている幅の広い軌道バスに乗って、未来的なビルの建ち並ぶ島々を結ぶハイウエイを新しい‘高速鉄道’に乗るために、最近出来たばかりのステーションビルに向かって移動していた。

夕暮れの濃い青空に浮かぶ、微かに赤みを帯びた雲が美しかった。ステーションの真下の片側三車線の真っ白なトンネルに入ると、外の光よりも遥かに明るいすっきりした光で満ちていた。

正面から巨大な銀色の鉛筆の様なカタチの列車が同じ軌道上をこっちへ向かってゆっくり移動してきて、そのままでは衝突する気がしたけど、程なく一両ずつ蛇腹状の連結部分が170度!ほど折れ曲がり軌道からそれて、となりにトンネル状に空いていた格納庫に器用に、すっぽり入っていった。

その間一切金属の擦れ合う音などはしなかった。

自分達の乗る予定の列車は地面の中を主に進む、銀色の巨大なミミズの様な乗り物だった。

乗り込む前にまず、その乗り物についての展示スペースに通された。スポンサーからの宣伝や簡単なレクチャーを受けなくてはいけないみたいだった。間もなくちょっとしたオープニングアトラクションが始まった。

それなりの映像効果と音の中、あちらこちらの壁がブーンという振動と共に順々にミミズのアタマ状に膨れあがり、それはこの乗り物が地中を力強く進むイメージを表現したモノらしかった。
お金のかかった演出だったけどあまりいいカンジはしなかった。

そのうち、スタッフ達が誰彼ともなく、なにやら話しかけ始めている。そばで聞いていると乗客を代表して何か一言ステージに登って話して欲しい、という交渉だった。
なんだか面倒なカンジになってきたので、しばらく隠れていようと思い、たまたま近くにあった階段で、すこしの時間だけ下のフロアーに避難するコトにした。

下に行ってみると、そこは最近改装したばかりの老舗の蕎麦屋だった。

古い建築意匠のまま、思いっきり明るい色の白木をふんだんに使った内装で、若女将をはじめ、店の従業員達の活気溢れる声が響いていた。
まもなく玄関でひときわ響くテノールの声がして、そこの名物出前持ちの老人が戻ってきた。古くからその店に伝わる宣伝文句を優しい節回しで唸りながら岡持をもって歩き回るのだそうだ。外から帰ってきてもそのまま、一節だけ名調子を聴かせてくれるのもこの店の名物で、お客達はみな、食べている手を休めてそっちを向いた。

自分はまだ席についてなかったので、そのまま玄関の方に行ってみると、老人が担いできたのは、岡持というより、江戸時代の夜鳴き蕎麦屋が引いていた屋台くらいの大きさの段違いの棚の様なモノで、小柄な老人はすっかりその陰に隠れて見えなかったけど、所々しか判らない古い言葉を使った優美な唄がその向こうから流れてきた。

一節唄い終わると常連客達が違う唄をリクエストし出した。「ぜひ久々にあれをやってくれないか…」そんな声がする。老人の快い承諾の声がすると店中はますます沸いた。とほとんど同時に老人は玄関脇のちょっと低めの神棚くらいの位置にしつらえてある、光沢のある黒い板の上に身軽に飛び乗った。

老人は日本猿が立ち上がっている位の大きさしかなかった。

飛脚の様な服を着ていて露出した皮膚は顔も体も全部濃いピンク色で、古いNHKの人形劇に出てきそうな、ざらざらした布で出来ているみたいだった。目だけは作り物ではない生命の光が宿って いたけど、白目の部分が無く全部鈍く輝く黒目だった。
老人は黒い板の上でひらりひらりと舞いながら唄い始め、皆それに合わせて手拍子をとりだした。音程の上下動を三分の一くらいに減らした炭坑節の様なメロディーだった。僕が一拍目と三拍目に叩いていると、何人かは二拍目と四拍目に叩いていて(要するに四拍全部手拍子がある状態)うるさい。

いつの間にか入り口に一番近いテーブルに黒いスーツを着た男女四人組が陣取り、分厚い本を何冊も広げながらさかんに議論している。手拍子を何拍目に入れるべきなのかを決定する委員会のメンバーだった。

議論に結論が出ないまま、うるさい手拍子が続いているまま、老人は唄い続けた。

2009年1月30日金曜日

Spontaneous


今年の年賀状、兼どあノブイメージポストカード。

私は冬の金澤の空がかなり好き。
目まぐるしく天候が移り変わり
雲のグレーは幾重にも折り重なり・・・とても味わい深い。

これは2009年1月2日の金澤。
この日は雲間から太陽が差す中、
音をたてて霰が降り注ぐ、金澤冬日和。
※「金澤冬の回り舞台」としてもっか提唱中

「Spontaneous」は妻の提案。カラスがとても楽しく自由そうに見えるでしょ。

同じ1月に撮影場所の21美でも「スポンティニアス」なるものへ・・・
というトークショーがあったみたい。
これもちょっとしたいい偶然。

2009年1月28日水曜日

ウツボカズラ

ジロウが
「今日のお祭りに屋台を出すから、元締めに挨拶に行く」というので、
私も一緒について行った。

古い小さい薄暗い商家の、番頭が座っていそうな場所に元締めは座っていた。
彼以外は誰もいなかった。ジロウが彼に向かって中腰になり
「おひけぇなすって~」みたいなカンジではじまる挨拶をはじめた。
自分もとりあえず中腰になってじっとしていた(笑)

話も終わり「まあ、頑張りな…」みたいな、打ち解けた雰囲気になってきたので
私はトイレを借りるコトにした。(お酒を飲んで寝るから、よくトイレに行く夢を観るんだ)

たたきの奥にある…と言われドアを開けてみると片一方の壁が床から天井まで全部ガラス張りの小さい個室になっていた。
あとの壁はタールを塗った様な焦げ茶色の板張りだった。
ガラスの向こうは、雑草が生い茂る小さな庭みたいなスペース。
一応外からは誰も入れないらしい。
一メートル先くらいに隣のウチの古い崩れかけた土塀があった。
午後の光を浴びて薄茶化ていた。
確かに誰にも見られないから、これでいいんだろう。
外を見ながらなんて、なかなか洒落ている。

外をよく見てみると、雑草だと思っていたモノのほとんどは、ウツボカズラだった。
こんな場所に群生して…大丈夫なのかな。
なんて思いながら、

初めて実際に、お目にかかるその食虫植物に、ちょっと見とれていた。